Francis Alÿs
Paradox of Praxis 1 (Sometimes Doing Something Leads to Nothing)
Mexico City, 1997
9:54 min
優れたアート作品は強いコンセプトを持っています。それはしばしばシンプルなものでありながら、人に話したくなるような豊かな物語性があります。
クリスチャン・ボルタンスキーは、しばしば実際に見に行くことが困難な場所に作品を設置します。《ミステリオス》は、パタゴニアの南の極寒の地に、巨大なトランペットを設置し、クジラに語りかける音を響かせる作品です。彼は以下のように語っています。『私は「言い伝え」に興味がある。言い伝えは芸術より強い。誰もそれ(作品)を観ていなくても、それを信じることは目で見るより意味がある。その話を知っていることが実際にその場所に行って観るより意味があるのだ。』彼の言葉から分かるように、ボルタンスキーは作品を通して作り出される「物語」自体の機能を重視しています。
フランシス・アリスの代表作に、「朝から晩まで街なかで巨大な氷の塊を溶けるまで押し続ける」パフォーマンス作品があります。アリスが「都市へモノではなく物語を挿入すること」と語るように、彼の作品は、たとえその作品を見ていないとしても、具体的なイメージを頭の中で思い描くことができます。つまり、受け手の興味を惹きつけ、想像力を喚起させるような、「筋書き(プロット)」を生み出すことにアリスは自覚的であるはずです。
一方で会田誠は、「ニューヨークをゼロ戦が空襲する」というアイロニカルなイメージを、擬古典的な日本画の形式の中で表しました。彼は『私にとって最もクリエイティブなのはアイデアを思いつく瞬間、つまり長くても2秒くらいの時間のことで、制作はそれを形にするための単なる「作業(労働)」だ』と語っています。アーティストが作品を作るプロセスは一元的なものではありませんから、会田の発言は極端かもしれませんが、作品と制作全体を貫く「アイデア(コア・コンセプト / プライマリー・コンセプト / ビジョン)」がアートにおいて重要であることは間違いありません。
このようにアート作品は、ときに少ない言葉(一行)で概要を表すことのできる非常に単純明快な構造でありながらも、アートの文脈において、多様な解釈を引き寄せ、豊かな意味を孕んだ「現代の寓話」として機能するのです。
本課題「One Line Narrative / ワンライン・ナラティブ」では、あなたの作品のプランを一つの文章で表します。同時にそのビジュアルイメージを簡単なドローイングで示してください。ドローイングは、スケッチでも、フォトコラージュでも、あなたにとってやりやすい手法で取り組んで下さい。ここでは幾つの新しいアイデアを出しても構いませんし、またあなたの過去の作品を引用することも良いでしょう。(最終的にはコンセプトの文章とともにドローイングのデータをアップロードしてください。)
あなたの社会と歴史に対する批評的な精神とアートの文脈に対する理解、そして自由な想像力と造形的な感性を基にして、あらゆる物理的制約と経済的制約にとらわれず、ファンタスティックな物語を持った作品を発想してください。
【リンク】
Francis Alÿs / Don’t Cross the Bridge Before You Get to the River (En / Jp) > Catalogue PDF
Christian Boltanski interview (Fr with Jp Subtitle) >Link
Makoto Aida Interview (En) >Link
授業計画書 >Google Docs.