2021年度 後期 広島市立大学「デッサン実習Ⅱ」実技課題

Into the Drawings 2021

 

Alberto Giacometti
Portrait of Isaku Yanaihara
Ballpoint pen and black ink on a corner of a newspaper (the Journal du Dimanche, dated 25 November 1956).
164 x 199 mm. (6 1/2 x 7 7/8 in.)

 

 

【課題趣旨】

 「デッサン」という言葉の意味するところは広く、美術のみならず芸術の諸領域で用いられます。その語源は仏語の「デッサン(dessin)」に由来し、英語では「ドローイング(drawing)」と呼ばれ、日本語で「素描」とも言います。西洋美術史において、素描(デッサン / ドローイング)は長らく創作の草案(下絵、エスキース)に位置づけられていました。ここで改めて、デッサンと同義のドローイングが「線を引く(draw)」の名詞系であることを考えたとき、「色を塗る(paint)=ペインティング=タブロー(完成された絵画作品)」が素描全般と対置的に捉えられてきた事がわかります。

 素描は、ルネッサンス期以降に独立した作品の一分野として見做されるようになり、19世紀以降のモダンアートにおいて、作品の下絵や習作としての役割から解放されます。その自律性を取り戻した素描は、タブローとは異なるより直截なアプローチとして幅広い表現が行われるようになりました。特に抽象表現主義以降は素描の持つ意味性がクローズアップされ、現代では作者が着目する造形性や身体性、主題性、思想性を強く反映するための一つの表現領域として、美術、建築、デザインなど幅広い場面で展開しています。

 先に述べたように、「デッサン」と「ドローイング」は、本来単に仏語と英語の相違に過ぎませんが、近年ではこれら二つの用語の示す意味合いは大きく異なってきています。日本では「デッサン」という語の方が一般的に普及していますが、日本語で「デッサン」という語が用いられる際には、現代においても「対象の再現性」あるいは「描写の訓練」という側面のみが強調されて理解される傾向があります。「ドローイング」という語は、「デッサン」の意味を含みながらも、制作行為における描く身体の運動あるいは思考した軌跡(=プロセス)といった広義の内容を包括し、表現の自由度を伴っていると言えるでしょう。

 本講座では、ドローイングという表現領域が内包する拡張性を前提にして、各自が選択したテーマ、モチーフ、メディア(描画材料)に基づいてその可能性を探求することを目的とします。これまで皆さんが、受験期までに繰り返してきた「デッサン」と「ペインティング」を往還する一連の固定した取り組みを相対化し、各自のドローイングのあり方、ひいては新しい制作プロセスとワークフローを開拓する機会となることを期待します。

 また、本講座期間に「図書館ゼミ」と「アートブックゼミ」を行い、先行研究を踏まえながらドローイングの持つ多様な展開可能性の考察を深めます。

 

 


 

 

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