2020年度 広島市立大学 芸術学部 自主研究会 終了

Class Ryohei Kan 2020

【Outline】
広島市立大学 芸術学部において、 油絵専攻講師 菅亮平による2020年度自主研究会「Class Ryohei Kan 2020」を企画します。本研究会では、通常の専攻におけるカリキュラムから離れて、美術並びに表象文化全般について、またそれに付随する思想、歴史、社会における様々なトピックを取り上げ、主にレクチャー、プレゼンテーション、ディスカッションなどを行います。あくまで希望者による自由参加の自主的な研究会であり、芸術における知の共同性を旨として学際的かつ自律的な議論の場を目指します。

 

 


 

 

Class Ryohei Kan 2020 第5回

「カナリアが さえずりを 止めるとき」展を受けて

日時:2020年11月19日(木) 18:00-21:00
受講:広島市立大学 芸術学部 (オンライン)

2020年11月6日〜15日に、アーティストの岩崎貴宏氏が企画する展覧会「カナリアがさえずりを止めるとき」が、本学のCA+Tラボラトリーと基町のAlternative Space CORE(広島市内2ヶ所)で開催されました。本展は、今年本学の芸術学部教員がハラスメントで懲戒処分された出来事を受けて、男性優位構造の美術業界や美術の教育現場におけるハラスメントに対して問題提起を行うことを趣旨に企画され、荒木夏実氏による講演会や学内シンポジウムも会期内に行われました。今回の自主研究会では、本展のアドバイザーの古堅太郎、出展作家の隅田うらら、小松原裕輔、桺谷悠花、山下栞らを交え、アフタートークの形で本問題についてディスカッションを行います。

参考1:「カナリアが さえずりを 止めるとき」ウェブサイト>
参考2:美術手帖掲載記事 / アート界のハラスメントに問題提起を。広島で開催される「カナリアがさえずりを止めるとき」とは? 

 

 

Yuka Yanagitani
A kind of temporary death
2020
Photograph, Frame, Envelope, Feather

 

 


 

 

Class Ryohei Kan 2020 第4回

模写とリバース・エンジニアリング 〜ダ・ヴィンチ《岩窟の聖母》模写について〜

日時:2020年11月17日(火) 18:00-19:30
受講:広島市立大学 芸術学部 (オンライン)

 

現在油絵専攻1年生は「油絵実習 Ⅰ」の課題の中で、ヴェネツィア派に端を発する油彩画のグリザイユ・グレーズ技法の実習に取り組んでいます。今回の自主研究会では、講師が武蔵野美術大学在籍中に行ったレオナルド・ダ・ヴィンチ《岩窟の聖母》(ロンドン・ナショナル・ギャラリー蔵)の模写の制作プロセスの解説を通して、同技法に関する理解を深める機会とします。絵画制作とは常に画家のパートナーである画材との協同作業です。絵画もまた建築同様の物質的な構造体であることを踏まえて、各種絵画諸材料の特性を生かした「絵画の設計」という観点について考えていきましょう。

 

 

Ryohei Kan
Copy of Leonardo da Vinci “Virgin of the Rocks”
2007
125.5cm × 110.0cm
Oil, tempera on gesso panel
Collection of Musashino Art University

 

 


 

 

Class Ryohei Kan 2020 第3回

ディスカッションゼミ

日時:2020年10月22日(木) 18:00-19:30
受講:広島市立大学 芸術学部 (オンライン)

 

広島市立大学 芸術学部 菅亮平自主研究会において、ディスカッションゼミを行います。今回は、油絵専攻M1の上村新が三都半島アートプロジェクト2020で発表した映像作品《待つ女》、油絵専攻M1の古川諒子が広島芸術センターで9月に開催した個展「しらない土地のしらない人々」、油絵専攻B4の赤星利樹が広島芸術センターで8月に開催した個展『「しまのひかり」を描く』をテーマとします。三名それぞれのプレゼンテーションを受けて、参加者を交えてディスカッションを行います。誰でも参加自由の形式で実施しますので、普段のカリキュラムから離れて幅広い視点での議論が共有できることを期待します。

 

待つ女 / Waiting Women
上村新 / Arata Uemura
2020
Single channel video 20’08”

 


 

 

Class Ryohei Kan 2020 第2回

古川諒子 自作レクチャー「記憶を呼び覚ます装置としての絵画」

日時:2020年6月11日(木) 16:00-17:30(質疑応答を含む)
受講:広島市立大学 芸術学部 (オンライン)

 

Dancing in the sea #4
2019
530mm×530mm
Acrylic on cotton canvas
©Ryoko Furukawa

【企画名】
古川諒子 自作レクチャー
「記憶を呼び覚ます装置としての絵画」

 

【企画概要】
日時:2020年6月11日(木) 16:00-17:30(質疑応答を含む)
対象:広島市立大学 芸術学部 在籍生のうち希望者
受講:広島市立大学 芸術学部 (オンライン)

登壇:古川諒子(画家 / 広島市立大学 大学院 芸術学研究科 博士前期課程在籍)
司会:菅亮平(美術作家 / 広島市立大学 芸術学部 講師)

 

【企画趣旨】
 広島市立大学芸術学部油絵専攻において、本学大学院芸術学研究科博士前期課程に在籍する画家の古川諒子の自作レクチャーを開催する。
 1994年に兵庫県に生まれた古川諒子は、「記憶を呼び覚ます装置としての絵画」をテーマとし、さまざまなドローイングの手法を駆使して数多くの絵画作品を制作している。2020年に発表した《Nobody in the room (家に人は不在 / いる気配はある)》では、かつて自身が暮らした家を題材として描いた複数のキャンバスを組み合わせて、断片化された記憶の再構築を試みている。古川の絵画において特徴的な淡い色調に溶け込んだ線のストロークは、不確かなる記憶の中の事物の浮遊性を捉えんとする作者によって慎重に選び取られたものに他ならない。
 また一方で、そこに住まう人々の時間軸が色濃く刻まれた「家」という場の場所性への古川の鋭敏な眼差しは、そのような私的空間に残された人間の気配にも向けられる。《Dancing in the sea》のシリーズにおいては、室内の中で折り重なるように寄り添う人物像がさまざまなシチュエーションで描かれる。「赤の他人の人生は追体験するものとしてあり得るのか」と問う古川にとって、それらの絵画シリーズの中に登場する表情が無く匿名性を帯びた抽象的な人物の表象は、「家」という題材を通して古川が手繰り寄せた「私の記憶」が「私たちの記憶」として鑑賞者に転化されることへの期待の表れなのだろうか。
 本レクチャーでは、古川の創作の軌跡を作者自身が辿りながら、「記憶」や「気配」という不可視なるものの追求と絵画という造形言語の関係性について、本学講師の菅亮平と受講生を交えて議論を深める場としたい。

 

【登壇者 経歴】
古川諒子(ふるかわりょうこ)。1994年兵庫県生まれ。2020年広島市立大学芸術学部美術学科油絵専攻卒業、現在は広島市立大学大学院芸術学研究科博士前期課程に在籍。 近年の主な展覧会に、個展「顔のないゆうれい」( 本と自由 / 広島 / 2019年)などがある。
アーティストウェブサイト:http://ryokofurukawa.mystrikingly.com/

 

【企画・担当】
菅亮平(美術作家 / 広島市立大学 芸術学部 講師)

 

レクチャー企画書 > Google Docs.

 

 


 

 

Class Ryohei Kan 2020 第1回

「 展覧会企画と展示シミュレーション」

日時:2020年06月02日(火) 18:00-19:30
場所:広島市立大学 芸術学部 (オンライン)

 

Gerhard Richter
Sketches (Glass Panes)
1977
Pencil on paper

【講座の概要】
日時:2020年06月02日(火) 18:00-19:30
受講:広島市立大学 芸術学部 (オンライン)
対象:広島市立大学 芸術学部 在籍生の希望者
講師:菅亮平(美術作家 / 広島市立大学 芸術学部 講師)

 

【講座の趣旨】
 先日本学芸術資料館展示室での今年度11月の学生作品の展覧会の募集がありました。また一方で、4年生および大学院2年生の皆さんは、卒業・修了制作の計画書を現在作成していることと思います。
 このような、展覧会の公募あるいは出展の際に提出する「プロポーザル」とは、「企画書、提案書、申込書」を意味し、社会の枠組みの中で各自のアイデアを実現するための第一歩です。プロポーザルをまとめるにあたっては、それぞれの狙いに基づいたイメージの作画(展示のシミュレーション図など)といったビジュアライゼーションの要素に加え、制作テーマや企画趣旨などの文章記述、また一方で予算や進行計画などの内容が含まれる場合もあります。本講座では、展覧会企画のプロポーザルの作成において最も重要なポイントである、展示シミュレーションのためのビジュアルイメージの様々な作製方法に焦点を当てます。
 日本における美術大学の油絵科の状況を考えたとき、その課程において立体や映像、インスタレーションなど、様々な表現メディアを用いた創作に発展していく学生が少なくありません。しかし、受験時にはデッサンを始めとした絵画の基礎的な造形力が必要とされるため、ほぼ全員が絵を上手に描くことができると言って差し支えないでしょう。ここでは、そのような高い作画スキルをプロポーザルの作成においても発揮することを目指します。また展示模型の作製方法についても説明を行い、展覧会の会場構成を俯瞰的に探求するそのあり方を紹介します。